ひとり部活動記録

文章書いたり、筋トレしたり、自転車漕いだり、山登ったり、基本はひとり。

「持ち物ログ」を始めようと思います(今日はM47の話をします)。

 僕はモノが好きだ。そして買い物も好きだ。でも何も知らない人に話すにはマニアックすぎるし、かといってマニアックな人たちと仲良くなるようなバイタリティはない。

なのでこの場で、半ば独り言的に、「このモノのここが好き」を書いていけたらなと思う。

 

興味のない人からすれば「どうでもいいこと」だろうけど、そこは独り言なので読み流してくれればいい。

詳しい人からすれば「浅い話」だろうけど、そこは「こんなのもあるよ」とか教えてくれれば嬉しいです。

 

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今日は手始めに、WWII後〜60年代にフランス軍で使われていたカーゴパンツ「M47カーゴパンツ」について書こうと思う。

M47カーゴパンツといえば「Martin Magela(マルタン・マルジェラ)」というデザイナーの話になる。

 

彼は現在当たり前のように存在する「ユーズド加工」なんかのパイオニアで、1988年だかに登場して、ファッション界に世界的なムーブメントを作り出した男だ。

謎の多いデザイナーで、デビュー当初以外はメディアの前に全く姿を見せず、2008年を最後に自分のブランド「Maison Martin Magela(メゾン・マルタン・マルジェラ)」からも退き、現役を引退してしまった。

それ以降のメゾン・マルタン・マルジェラは「メゾン・マルジェラ」と改名したりしながら、ネット通販を始めたり、H&Mとコラボしたりして古参ファンからすれば苦々しい道をたどることになる。

 

ただ2008年以降ブランドの業績は持ち直し、現在はジバンシィディオールなどのデザイナーも務めたジョン・ガリアーノがデザイナーになっている。

お店に行ってコレクションラインの服を見てみたけれど、僕の目からすると面白いことやってるなあとしか思えなかった。

やっぱり古参ファンからすると「つまんねえ」「コレジャナイ」なのかなあ。

 

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話をM47に戻そう。

なぜM47とマルタン・マルジェラがつながるのかというと、彼がまだ現役の頃、フランスの縫製技術の高さをアピールするためにM47を裏返しにしてモデルに履いてもらい、ランウェイに送り出したという逸話が残っているからだ。

最初は「なにそのファッションフリーク受けしそうな話」と思ったが、実際に手に入れてみて眺めると「軍モノでここまでやってるのは確かにあんまり見ないな」と唸らざるを得なかった。

 

僕が購入したのは前期と後期(の前期と後期)のあるM47のうち、後期の前期のサイズ33。前期よりも生地が薄く、後期の後期よりも緑みが少ないという特徴がある(だったかな)。あ、あと前期よりもややシルエットが細めになっているそうだ。

僕からすればこれでも「ズドン」という太さがあるのだが、確かに前期の太さは「唯一無二」という感じがしてカッコいい。

このシルエットの独特さがM47の大きな魅力の一つ。

 

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次にディテールを見ていこう。わかりやすいのが後ろポケットのフラップの形だ。普通大量生産の軍モノは真四角のフラップか、ホームベース型の直線的なフラップが採用されている。

しかしM47では微妙にカーブを描いた曲線的なフラップを使っている。何その美意識。

 

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そしてフランス軍はエレガントなのでボタンが見えるような仕様にはしない。

フラップの裏に一枚布をつけて、それをボタンに留める方法を採用し、外からはボタンが見えないようになっている(これは多分、作戦中にボタンが装備に引っかからないようにするためでもある) 。これは横ポケットにも採用されている。

このおかげでパンツ全体が静かなデザインになっており、M47の魅力を高めている。

 

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また個人的にすごく好きなのがこの裾を絞るためのボタンだ。アメリカ軍とかドイツ軍のカーゴはここが紐になっているのだけど、紐って結ぶのが面倒だし、なによりなんかエレガントじゃない。

でもボタンだと急に「おしゃれ」って感じになる。 僕は絞ったら、2回ほど折り返して履いたりもする。

こうすると膝下くらいまではM47流のズドンと太いシルエット、そこから下は急激に細くなるテーパードシルエットという、なかなか変わったシルエットになる。

 

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M47の横のポケットは、かなり広いマチが取られているから思い切り広げて履くと、さらに独特の形になる。もうここまでくるとドラマチックだ。

 

お気に入りはM47をヘソのあたりで思い切り縛り、マーガレット・ハウエルのゆるいフィッティングのリネンシャツをイン。同じくマーガレット・ハウエルの上品なグレーのワークジャケットを羽織る。そこにマルジェラのブーツを合わせる着方だ。

実は上品一辺倒なマーガレット・ハウエルも、もともとは当時の英国紳士服ではありえなかった「たっぷり身幅をとったゆるく着る紳士シャツ」という、ある意味パンクなファッションを提案した女性でもある。

そんな彼女の感性が、「新しいものこそ善」というテーゼに「ユーズド加工」というアンチテーゼをぶん投げたマルジェラの感性に似ている気がするのは僕だけか。

そしてそんな英仏のパンクなデザイナーをつなぐのは、フランスの名もなきデザイナーと職人が作り上げたカーボパンツの名作だ。見た目は野暮ったいんだけど、着ていて気分が盛り上がる。

 

マーガレットやマルジェラに限らず、後世に残るデザインというのはどこかパンクだと思う。

もちろん僕はコンサバも好きなのだけど、服装でくらい静かにパンクしてもいいかなあ、とも思う。

いやはや、服は着るのも楽しいけど、眺めるのも楽しいなあ。