文豪も〆切と戦っていた!(今日は短文)
こんな本を買った。
タイトルは『〆切本』。表紙には「どうしても書けぬ」「あやまりに文芸春秋社へ行く」「拝啓 〆切に遅れそうです」とかしこまってるのになんとも弱気な文言が並び、裏表紙には「ほんとに風邪ひいたんですか」「ほんとだよ」なんて担当者とのやりとりも載っている。
一体何の本かといえば、田山花袋や夏目漱石、谷崎潤一郎や村上春樹などそうそうたる文筆家90人の「〆切」に関するエッセイや随筆、手紙を全350ページを超えて収録したものだ。没後も読み継がれる作品を生み出した文豪たちも、担当者にハッパをかけられて頑張ったり、あるいは開き直って「書けないものは書けない」と言ってみたり、何やら小難しい理由をつけて延納を申し出ていたのかと思うと笑えてくる。
「鉛筆を何本も削ってばかりいる」
「不甲斐ないことに、いつまでたっても情熱が起こりません」
「用もないのに、ふと気がつくと便所の中へ這入っている」
「才能がないのではないか」
「殺してください」
悶々と「書けない……書けない……」と悩みながら、落ち込んだりごまかしている様子は、いっそ可愛らしい。これが「先生」と呼ばれるような大人物なのだからなおのことだ。そして帯に書かれているように「なぜか勇気がわいてくる」。
まだ数ページしか読んでいないけれど、仕事のお守りになりそうな予感がする。