ひとり部活動記録

文章書いたり、筋トレしたり、自転車漕いだり、山登ったり、基本はひとり。

少しだけ前へ。

ちょっとタイムリーな話題を書いたので、週一の更新ペースとは別で投稿します。

DeNAの医療系キュレーションサイト「WELQ」。なんだかいろんな情報が飛び交っていて惑わされるけれど、結局のところ「信ぴょう性のない医療情報をあちこちからカットアンドペーストして量産し、徹底したSEO対策でGoogleアルゴリズムをダマしきっていた」みたいな話だと思っている。「法律には触れていないけれど、マナーには派手に違反している」という点が問題だという話らしい。

この記事を量産していたのが、僕のようなクラウドソーシングを介して仕事を斡旋してもらっているライターたちだった。幸いにも僕がDeNAから仕事をもらう頃には、こういう量産系キュレーションサイトからの仕事を受けている暇がなくなっていたので、DeNAと仕事をしたことはなかった。

しかしこれは完全にタイミングの問題だ。気になってこれまで関与したメディアに関して「メディア名 パクり」とか「メディア名 著作権」とかで検索してみると、1つだけ問題のあるメディアがあった。

もちろん名前は挙げないけれど、執筆当初から「え、これってグレイじゃなくてブラックじゃないの?」と思うレギュレーションだったが、正直な話「まあ、クライアントがいうならグレイなんだろう」くらいの認識しかなかった。駆け出しの超低単価ライター(1500字くらい書いて、画像も10枚くらい入れて手取りは640円。やばい)からすれば、そんなことを考えている余裕もモラルもなかったのだ。

しかし徐々に単価が上がっていくにつれ、こうしたいかがわしいメディアのレギュレーション通りに記事を作っていると、クライアントから「ふざけんな」的な指摘が返ってくるようになる。ここでようやく、やってはいけないことや「記事の質」というようなことを考えるようになっていく。

僕は完全にクライアントに育ててもらって、なんとか今回の騒動のギリギリ外に立っていられるのだ。あと1年か2年、育つのが遅ければ今頃DeNAのメディアと一緒に心中していたかもしれない。





とはいえ今の立ち位置も全くもって安全ではない。悲観的に考えれば、今回の騒動で量産型低コストのメディアは随分淘汰されるはずだ。もう少し高コストで質が高い取引先メディアでもレギュレーションを見直したり、「これまで以上に著作権には気をつけて」という指示が出たりしている。グレイゾーンが狭まったことで、これまでホワイトに近かったメディアも相対的に濃いグレーになりつつあるのだと思う。

このような状況でもなおライターとしてお金をもらい続けるためには、正真正銘の「オリジナルコンテンツ」が提供できるようにならなければダメだ。さもなければ早晩飯の種は尽きる。今僕がメインで受けている仕事はだいたい次の3つのタイプに分類できる。

1.法律的なトピックを、公共機関情報を基に再構築し、初学者でもわかりやすいように噛み砕く。
2.エンタメ関係のトピックを、公式Twitterや公式YouTubeなどの埋め込みを前提としたメディアから引用しつつ情報を集め、紹介・解説する。
3.書籍を参考に内容を再構築し、わかりやすく解説する。

3はややグレイゾーンだが、あくまで書評のレベルに抑えて「該当する参考書籍を読まなくてもよい」とならないように配慮はしている。また書籍の内容を捏造したり、否定することは決してせず、言うなれば「勝手に本の宣伝をしている」状態を意識もしている。それでオリジナルコンテンツになっているかは微妙だが、僕にとってのウェブメディアの仕事=「まだ見ぬリアルと読者を繋げる」は達成できているとは思う。

ただこんな記事でお金を稼いでいるようでは、かなり危ういことは間違いない。良質なコンテンツは読者に新しい価値を提供し、大なり小なり人生を変えるものでなければならない。その意味では2のタイプの仕事はまだ「良質なコンテンツ」と言えるのかもしれない。しかしそれでもまだ、足りない。





そこで僕は少し先に進むことにした。つまり部屋から出ずに書く記事「コタツ記事」から少しずつ脱却し、「取材記事」「インタビュー記事」が書けるライターになっていく努力を始めたい。そしてゆくゆくは僕のインタビューそのものに価値が出て、「インタビュー記事なら鈴木に頼みたい」というライターになりたい。ものすごく人見知りの僕だけど、タモリさんの「人見知りじゃない奴は面白くない」を信じて、ゆるく頑張りたいと思う。

初めの小さな第一歩として著作権についての勉強を含め、ライターとして、あるいは編集者としての教科書を3冊買ってみた。本から入ってしまうあたり引きこもりの僕らしいが、これは仕方ない。買ったのは以下の3冊だ。

・『著作権法入門 第2版』
→タイトルはめちゃくちゃ硬いが、内容はまあ読んでいても苦痛にならない程度。類書の中ではとてつもなくキャッチーに書かれているらしい。まあ以前『マンキュー入門経済学』を丸々初学者向け(自分も思いっきり初学者やのに)に解説し直した経験があるので、自分で読むくらい多分楽勝だろう。

・『エディターズ・ハンドブック 編集者・ライターのための必修基礎知識 』
→これはマジでわかりやすい。実用に即して「企画の立て方」「取材の仕方」
「原稿の書き方」などの章立てがあるので、どこから読めばいいかもわかりやすい。こういう勉強ってしてこなかったので、ほんまに今更な話やけど。大学受験の時に古典と英語の単語帳を3年の12月に買ったのを思い出した。

・『インタビューの教科書』
→とりあえずその名もズバリなものを買ってみた。まだ目を通してないけれど、インタビューに関するノウハウがずらりと簡単に解説されているそうな。まずは全体像をつかまなきゃ話にならないので、1冊目として読んでみたい。

とても小さな一歩だとは思うし、下手したら全く進んでないのかもしれない。でも無理をして抑うつがひどくなったりしたら嫌だし、やっぱり少しずつ進むのだ。少しずつ進んでいれば、うずくまっているよりは前に進めるだろうから。



※今年の7月に高知大でやった特別講義の依頼が、来年分も決定しました。次はどんな話にしようかな、楽しみです。